【報告】令和4年度学習会「子どもの心の声が聞こえますか?」〜後編〜
- pokuroom
- 2023年2月15日
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第二部では、参加者からその場でご質問を受け付けながら、それに対して若者4人が回答するトークセッションを行いました。引き続き、阿部伸一さんの司会で進行しました。
■第2部 トークセッション――参加者からの質問
もりけん:第2部では、皆さんの質問を交えながら阿部先生と話していきたいと思います。ネットの皆さんは画面上で挙手するか、チャットを打ってください。会場の皆さんは挙手していただけると助かります。
阿部先生、1部の話を聞いてどうでしたか?
阿部:こんな振りでしたっけ(笑)?もっと聞きたいなっていうのが一番の率直な感想です。それと、やっぱり話してくれてありがとうございますって気持ちがすごく強いですね。
では、メンバーや僕への質問をお受けします。
――学校へ行かれなくても、学校や友だちとつながっていたい?
参加者①:中3の娘の母です。中2の頃から不登校で、2学期はまだ一回も行けていません。教育センターや病院の先生方とは会話のできるところまで回復できたんですが、学校とも友達とも全くつながっていなくて。先生ももう少し関わってくれたらいいのに、とモヤモヤしています。子ども自身がつながりたいと思っているかは、私も分からないんです。教えていただけたら嬉しいです。
阿部:ありがとうございます。皆さんは学校に行ってない時に、学校とつながりを持ちたかったですか?
若:僕は、自分がクラスにとってすごく迷惑な人だと思われてるんじゃないかっていうのが結構あって、それがめちゃくちゃしんどくて、悩んだ末に完全に行かない方を選ぼうって思って、中2の後半から完全不登校になったんですが、でもその間もやっぱり行けたらいいなとは思ってました。
中3の時、メールでやり取りしていた友達に、「自分のことどう思ってる?行ったら迷惑なのかな?」みたいなことを聞いてみたら、「そんなことないんじゃないかな」って言われて一度だけ学校へ行ってみたけど、周りから「めっちゃレアキャラが来たぞ」みたいな感じで扱われて、逆にしんどかった。そこからはもう行かなかったですけど、行きたかったという気持ちはありました。
ゆうき:自分は、中1の秋から行けなくなり始めたんですけど、最初のうちは部活の仲間や友達から、頻繁じゃないけど連絡が来たり、たまに学校へ行くと心配して声をかけてくれたりっていうのがありました。ただ、完全に行かない期間に移行してしばらく経つと、連絡も来ないしこっちからもしない、という感じになりました。当時は友達がいなくても別にいいかな、みたいな心持ちだったし、学校にもあまり関わってほしくなかったので、先生が何度か自宅に来てくれても、当時の自分にとってはありがた迷惑でした。親にも学校にもほっといてほしい、そんな自分本意な考えばっかりでしたね。
阿部:ゆうきさんと若さんとは、またタイプが違いますね。
えぬ:自分はいじめも経験しているので、正直学校とは関わりたくない、先生の発言も含めて二度とあんなところに行くか、みたいな感じはあったんですけど、中学生で不登校だった時は「友達とご飯食べて帰りたいなー」って思ってました。友だちと帰りながら話したり、お泊りを計画したり、そういう楽しみだけで生きていたいなって感じてました。友達の存在は、相手にもよるけどすごく大切なものなので、もしかしたら娘さんも本当は行きたいんじゃないかな?と思います。
もりけん:小学校の頃、不登校の友達がいたんですよ。その友達は同じクラスの子とは連絡を取りたくないし、教室にも行きたくないと言っていましたが、僕ともうひとりの友達にだけはずっと連絡を取ってくれていて。でも中学生になって僕、いきなり転校したんですよ。お別れも言えず、連絡先も聞けずに転校しちゃったんで、しばらく落ち込みました。少し落ち着いた時にどうしてもつながりたくて、アポなしで会いにいって連絡先も交換できて、今も交流が続いてます。親友と呼べる人とはつながっていたいって思います。娘さんも、つながりが大事かなって思います。
阿部:お子さんによって全然違いますよね。関わりたい子もいるし、学校で嫌なことがあったら当然関わりたくないし、来ないでほしい。でも動きたい、人とつながりたいっていう気持ちは、誰もが本能的に持ってると僕は思っています。本当に安心できる相手であれば、つながりたい。自分が否定されない、理解してもらえる場所があれば行ってみたい。でも安心できないしリラックスできないなら、やっぱり一人の方がいい。
僕はよく、「足の骨が折れてる人に『走りたい?』って聞いているようなもんだ」と表現するんですが、足の骨が折れてても「走りたい」っていう人はいるんです。そこで僕ら大人は「じゃあ走れば?」って言っちゃう。でも、骨が折れていたら走れないんです。やりたくない、つながりたくない、ではなくて、今はそれができないんだっていう見方が必要じゃないか。すべてを諦めたわけではなくて、どの子も動きたいしつながりたい、でも不安だ、そんな感覚じゃないかなって気がします。
――かつての自分へメッセージを伝えるとしたら?
参加者②:今の自分から、不登校時代の自分へ掛ける言葉があれば何でしょうか。
阿部:おもしろい質問ですね。皆さんはかつての自分に何と言って声を掛けますか?
もりけん:周りの目なんて気にすんな、ですね。
僕、昔はどことなく暗かったんですよ。でも、図々しく生きるってことを意識し始めたら、心の持ちようが変わって。昔は周りの目をずっと意識してて、友達や周りの影響をそのまま素直に受けちゃってた。心の盾がないから、ダメージもでかかった。昔はいい子過ぎたなって思います。いまは少し図々しくなって、自分が言いたいこともはっきり言えるようになったからこそ、こうやってちゃんと前に出て話せるし、自信もちょっとついたし、明るく話せるっていうのはあります。
えぬ:私も小学校時代は、周りの目を気にしていました。見た目にコンプレックスがあったので、周りからの目が怖くて、下を向いてばかりで前髪も伸ばして。いまは、周りの目なんて気にせず、自分らしく生きたらいいんじゃないの?って声かけてあげたいです。
高校生だった自分には、「危ない道には行かないで」って声をかけたいです。関わってはいけない人と関わってしまって、怖い思いや辛い思いをしたので、そっちには行かないでって、ずっと声をかけてあげたかったですね。
ゆうき:僕は正直、言うことないんじゃないかなと思ってて。というのも、その当時の経験があったから、今この場に座らせていただいてますし、不登校って経験があったから「ここからでもなんとかなる」みたいなマインドや経験則が得られたっていうのがあるので、そのまま今の自分になればいいのかな、なんて思ってます。
阿部:ありがとうございます。何も言うことはない、このままでいいよ。深いですね。若さんは何かありますか?
若:そうですね。ゆうきくんと同じように、まだ名前をつけることはできないなっていう感じですかね。まだまだ若者で、走り始めたばかりの自分にとって、不登校がどうだったかなんて決着をつけることはできない。
最近思うのが、これから社会との距離が近づくにつれて、普通に学校へ行って普通に就職して…みたいな価値観の中で生きてきた人ともっともっと出会っていくうちに、きっと自分とのギャップに苦しめられたり悩んだりすることもあるんだろうな、と。そこでまた、自分にとって不登校ってなんだろう、と考えたりするようになるのかな、と思います。
阿部:ありがとうございます。四者四様ですね。僕があえて答えるとすれば、ゆうきさんが言った「そのままでいいよ」って大人が言う勇気が必要だと思ってます。子どもに変わってほしいと願い過ぎることで、「自分はダメなんだ」いう気持ちを子どもに与えてしまっているからです。
いじめられたから行かない、しんどいから休む、辛いから今は関わらないって、ごくごく自然に自分の身を守っているだけなのに、大人が早く戻らなきゃとか、みんなはこうだよって言えば言うほど、子どもは自分がダメなことをしていると思ってしまう。だからあえて「そのままでもいいんだよ」って言ってあげる勇気が必要じゃないかなって感じています。
――「理想の学校」って?
参加者③:私は、今の日本の教育を変えたくて大学で勉強しています。皆さんはどんな学校だったら行きたかったですか?
もりけん:学校って、勉強とか時間の制約とか、嫌なものとイコールになっちゃってるじゃないですか。だから、学校に来るメリットを増やす。たとえば学校でカラオケやボーリングができるとか、楽しいものや娯楽を増やせば、行きたいって気持ちが僕としては沸いたかなぁ。
阿部:あえて議論をしましょうか。じゃあ、勉強したい子はどうしたらいいですか?
もりけん:義務教育は必要だとは思うんですよ。ただ、なんか違うんですよ。小学校3年ぐらいまでは今まで通り勉強をして、そこから先の3年間で、あなたがやりたいものはどれ?って聞いて、それを伸ばしてあげる。ほかの教科は嫌にならない程度に教える。個性を伸ばしてあげるっていうのがいいんじゃないかなって思います。
阿部:だんだん理想の学校に近づいてきましたね。はい、えぬさん。
えぬ:人がいない学校なら、私は行けると思います。以前「学校は小さな社会」という言葉をSNSで見たんですが、人間関係も学校生活も先生とのやり取りも、すべてが社会に関わってくることだから辛いんじゃないかなって。伸び伸びと広い教室で、自分一人で勉強しながら、分からないところを先生に聞いたり、図書館みたいな静かで一人の空間がある場所が理想だなって思います。人が居るとトラブルが多いので。
阿部:ありがとうございます。これも深いですね。
ゆうき:学びたいことを自分で選べる学校、でしょうか。大学では本当にやりたいことを見つけて、選んで学べるじゃないですか。誰かに強制されてるような義務教育の時間割じゃなくて、自分で選んだカリキュラムであれば、もっと通いやすかったのかなと思います。
若:行きたい時に行けて、学びたいことに特化できるのが一番良いと思います。それと、コミュニケーション能力を学ぶ時間も必要かなって思います。コロナ禍でリモート授業になって、コミュニケーション能力の発達に影響があると聞いたので。
阿部:学校はまず、多様化を受け入れなきゃいけないと思うんです。最初の二人が言った「遊びたい」「一人でいたい」という言葉が分かりやすいですが、一つの教室の中にいるどちらの子も過ごしやすい環境を、我々大人は目指すべきだと思っています。今の子どもたちはものすごく多様化しているということをまず大人が理解した上で、学校を成立させることが必要です。
それと、あらゆる場面で将来に役立つことばかりを考えすぎだと思います。あらゆることが将来、将来、将来で、いま子どもたちがどんなことを考えているのかに着目しづらい仕組みになっている。それから、子どもたちに自由が少なすぎます。すべてが与えられるばかりになっているので、もうちょっと自由度を高めてあげたいとすごく感じます。
いま「学校に通ってはいるけれど、とても辛い」という子が、めちゃくちゃ増えています。不登校にならないように、休んでもまた頑張って登校する。仮面をかぶり続けている状態の子がすごく多い。もしかしたら僕たち大人も仮面をかぶっていて、働くことや生きることを本当に幸せだと思えていないんじゃないかと思うんです。だから、学校を休むと決めて、やっと仮面を取ることができた子どもたちに、僕らはしっかり向き合ってあげる必要があると思います。
――どうすればいい?動けずにいる子の進路決め
参加者④:私の息子は中3で、もう5ヵ月学校に行けていません。私はもう学校に行かなくていいよと言いました。もう行けないだろうなって雰囲気があるし、学校に行けといえばこの子を傷つけると思い、息子の選択を尊重して、朝も起こさず夏休みも放っておきました。でも一応準備だけはしておこうと、私一人で高校に見学に行ったりはしていました。夏休みも終わり、担任の先生から志望校を決めてくれと言われたのですが、動けずにいる息子の進路をどうやって決めるんでしょうか。
皆さんは高校に行ったんですよね。行こうかなって思い始めた時期はいつぐらいだったのか知りたいです。
若:僕は学校の進路相談で「とりあえず行っとこう」みたいな流れになったんですよ。このタイミングで選べるのはここしかないからって、適当に見学に行って、適当に定時制を選んで行ったんですけど、まあ3日で行かなくなりましたね。費用とか考えると、申し訳ないなって話です。
通信制に入り直したのは21歳の時です。マイペースにやれて登校日数も少なくていいのが自分に合っていたので、なんとかやりきることができました。
ゆうき:僕の場合は中3の夏ですが、比較的早く不登校になったおかげで、タイミングよく高校のことを考えられたんだと思います。自分の中である程度気持ちの整理がついたというか、転んでいきなりすぐには起き上がれない状態だったのが、ようやく力が入るようになってきたみたいな。なのでやっぱり、本人がある程度回復して、心の状態に余裕が出てきた頃に投げかけてみるといいのかもしれませんね。
もりけん:今の質問を聞いて、ちゃんと放任してるな、すごいなと思いました。放任と放置は違うんですよ。放置は完全に無視して、いないものを扱うみたいな感じですけど、今の話を聞くと、ちゃんと高校の事も考えてくれたりして、ちゃんと放任できているなと思って本当にすごいなと思いました。頑張ってください。
阿部:本当ね、その通りです。高校に行く気がないからって、放置することは絶対におすすめできません。子どもが見放されたと感じることは、絶対避けてほしいと思います。高校の話はしなくても、別の話はしてほしいし、返事が返って来なくても声をかけていけば、自分のタイミングで何かが動くと思います。
高校に行かないと言ったとしても心の中は違うかもしれないし、元気になったから、自分は学校に行かず、こういう道を進みたいと言えることもある。怖いのは、仮面をかぶった状態で選択することです。せっかく休んでいるんだから、自分らしさとは何だろう?とか、どういう道を進むのが幸せなのかを考える機会を大事にしていただきたいと思っています。
もりけん:皆さんご参加ありがとうございました。前回の学習会は、女性の方が多かったんです。でも今日は男性の方もちらほら見えて、ちゃんと考えてくれてるんだなって気がして嬉しい気持ちになりました。ありがとうございました。
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