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【報告】令和4年度学習会「子どもの心の声が聞こえますか?」〜前編〜

  • pokuroom
  • 2023年2月15日
  • 読了時間: 10分
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学習会の第一部では、阿部伸一さんの進行の下、不登校経験のある若者4人が事前に参加者からいただいていた質問を選びながら、順に語りました。


■趣旨説明――僕たちの中に、あなたの子との共通点を探してください


もりけん:僕たち4人は、あなたたちの子どもではありません。あなたたちの子どもが不登校になった理由は重いかもしれないし、軽いかもしれない。だけど、僕たち4人との共通点がどこかしらあると思います。その共通点を探しながら聞いてもらい、皆さんの子どもに対する糸口を掴んでいただけたらと思います。

あなたたちの子どもは、あなたたちの子どもなので、僕たちの対処法を自分たちの子どもにあてはめないであげてください。僕らが「これが答えだ」と思っていることが、自分の答えだと思っていない子もいると思うので。三者三様という言葉があるように、みんな違うので。これで終わります。


■第一部 トークセッション――不登校経験のある若者が、参加者の質問に回答


阿部:阿部と申します。よろしくお願いします。では自己紹介から行きましょうか。

若(28歳):小学校2年生ぐらいから若干不登校で、中2からは完全に学校に行かなくなり、高校も行かなかったりして、最終的に二十歳ぐらいから入り直して卒業しました。

今回の機会を通して、自分にとって学校って何だったのかを振り返ってみたいと思いました。「こうすれば完全に問題が解決する」というものはないけれど、そのきっかけを一緒に考えられたらいいな、と思います。

ゆうき(24歳):不登校の期間は、中学校1年生の夏から中学校3年生までで、中3の秋からは適応指導教室のスキップに通いました。

不登校だった時から10年近く経っているので、いろいろと忘れ始めています。当時の自分がどうだったのか、どう考えていたのかを思い出しながら話していきたいと思います。

えぬ(17歳):不登校だったのは小学校6年生くらいから、一時復活して中学2年生までで、また不登校になったのは高校2年生の春頃から現在までです。いまは新しい高校に入り直して、新しい人生を歩もうと第一歩を踏み出した段階です。

自分も一時絶望を味わったからこそ、誰かを少しでも救い出してあげたい、同じ仲間がいると知ってもらいたいという思いがあります。苦しい気持ちを少しずつ乗り越えていけたらと思っています。

もりけん(17歳):中学2年生の時に不登校になって、適応指導教室スキップに通い、高校1年生からまた頑張ろうと思っていたんですが、ちょうどコロナや病気が重なって高校を不登校気味になってしまい、いま高校をやめてフリーターで頑張っています。

少しでも楽になってほしいという気持ちと、過去の自分があったからこそいまの自分があるんだよっていうのを伝えたくて、こういう場に出てきました。よろしくお願いします。

阿部:ありがとうございます。なんかもう、立派ですよね(笑)。

今日は4人の若者たちに対して、皆さんから事前に質問をいただいています。この質問の中で、自分が答えてみたい質問に答えてください。


Q1社会にもう一度復帰できるようになったきっかけと、不登校の時の親の対応を教えてください

:古い価値観の祖父母の下で育った母は、勉強しろとか、この学力テストを受けろとか、型にはめる言葉を言ってくることが多かったのですが、僕からするとそこに興味はなくて、どっちかといえば人が好き、人と遊ぶのが好き。だから勉強より、人に会わせてほしいと思っていました。母親は、知り合いを通じてボランティア先を紹介してくれたので、それは良かったなと思います。

社会に復帰できるようになったきっかけは、西東京市がやっている居場所(we)に通い始めたことです。学校にも行かず働いてもいない人を受け入れて、一緒に考えてくれる居場所で、自分と同じような経験を持つ人も多かったので、結構新鮮でした。自分には外に友達もいて、けっこう遊んだりもするのですが、「バイト何もしてないの?とりあえずやれよ」みたいな言われ方をするのはつらかったので、そういうことを言ってこない居場所で安心できた、というのはありました。


Q2 学校は欠席していても、学校以外で行きたい場所はありましたか

ゆうき:ありましたね。僕は読書が趣味なんですが、本のモチーフになった場所とか、その物語の舞台にすごく興味があって。行きたいなぁとは思うんですけど、不登校だったときは中学生だったので、なかなか気軽には行けない。それに、不登校の自分が外に出ることにはちょっと気が引ける部分もありました。

阿部:行きたいな、と思っても、学校に行ってないので「行きたい」って言いづらかったですか?

ゆうき:そうですね。自分からはなかなか言いづらかったなと思います。


Q3 動き出すきっかけになったのは何ですか

えぬ:ちょっと重たい話になりますが、完全に不登校になった高校2年生の時に、いま話題になっている歌舞伎町に出向いてたんですね。そこで親との関係が悪い、家にも学校にも居場所がない、歌舞伎町にしか居場所がない子たちとたくさん接する機会があって、私ができることってなんだろう?って考え、配信アプリを使ってその子たちの話を聞いたり、自分の話をするようになりました。

そんな中で、「学校行けるようになったよ」「学校行こうよ」って言ってくれた子がいて、「あぁそうだ、私も学校行かなきゃ」って思ったのが、動き出すきっかけです。

阿部:深い話ですね。自分が学校に行きたいかどうかもわからなくなっていたんだけど、つらい思いをしてる人たちと接していて、ふと、行きたいなっていう自分に気づいた。

えぬ:そうですね、そんな感じです。不思議な感覚でしたね。魔法にかかったみたいな。

Q4 苦しかったとき、親に一番分かってもらいたかったことは何ですか?

もりけん:正直、お母さんはすごく優しい対応をしてくれていたんですよ。でも、お母さんにも整理がついてない部分があって。一番分かってもらいたかったのは、僕が苦しい思いをしてるっていうのをちゃんと理解してほしかった。本人はそんなつもりなかったと思うんですけど、「学校に行け」っていう一言にめちゃくちゃ傷ついて、それをほとんど毎日言われたことで精神的に参ってしまった。子どもも人間だから、言葉一つで傷つくっていうことを理解してほしいなっていうのはありますね。

阿部:そういう子、多い気がしますよね。自分がしんどかった時に、親に分かってほしかったことを言葉にできそうですか?言葉にするのは難しいですよね。

ゆうき:学校に行かなきゃいけない、行った方がいいっていうのは分かっているんです。でも、言われること自体がストレスだし、プレッシャーにもなる。もうちょっと放っておいてほしかったけど、なぜ放っておいてほしいのかをうまく言語化できなかったですね。「うるせえ、ほっとけ!」って怒りながら言ってた。いまとなっては懐かしいです。


Q5 「理想の不登校」とはどのような状況でしょうか

:ちょっと大きいことを言っちゃいますが、小さい頃からずっと不登校やってると、「学校はあくまで一つの選択肢でしかない」みたいな感覚が常にあって。自分が必要と思ったり、学びたいと思った時には学校に行くけれど、そうでない時は行かないみたいな。それが周りには理解されなくて、辛く当たられたりもしましたが、本来、学びってそういうものじゃないのかな?みたいに思ってて。

週5日決まったことを義務教育で教えるというのは、教える側からすれば楽かもしれないけど、それで学びたい気持ちが育つのかな?みたいな疑問があります。

阿部:ありがとうございます。すごく大事なことを言ってくれました。今は学びたくなくても学ぶ仕組みが必要なのに、本当に学びたい時に学べなかったり、休みたい時に休めなかったり、考えずに学ぶことに慣れちゃってる。

理想の不登校っていう言葉は、親御さんにとっては嫌かもしれないですが、すごく大事な視点だと思います。


Q6 5月から不登校で自分の部屋に引きこもっています。ここ2ヶ月は親を拒絶し、昼夜逆転もひどく、高校の事も考えられないと言っています。スマホしかやってない息子はこれが幸せだと言います。高校に行くという気持ちが持てたら昼夜逆転は治りますか?

ゆうき:私は大学生のいまも、しょっちゅう昼夜逆転しています。朝って「学校に行く」とか「身支度をする」とか、自分がいま避けているものや嫌なものが集中してるんですよ。そこから逃げる、目を背けるために、自分にとっての朝を消す感じで昼夜逆転している、というのがあります。

いまは娯楽の幅も広がって、SNSやYouTubeを見ているだけでも時間が過ぎていく。だから、「スマホしかやってない」っていうけど、スマホで見れるもの、やれることが息子さんにとってはすごく楽しいというのは事実なんだろうと思います。

多分いまが一番ひどい時だと思うので、しばらくは見守りつつ、過度に干渉しないぐらいでいれば良いのではないでしょうか。中学生なら卒業というタイムリミットがあるので、それが近づいてくると嫌でも高校のことを意識するんじゃないかと思います。

阿部:たとえば、スマホを取り上げたら昼夜逆転が治ると思いますか?

ゆうき:思いません。スマホがあるから昼夜逆転しているわけではないと思います。インターネットを介して外部とのつながりができている時もあると思うし、自分が好きなものへの入り口が何もない状態よりは良いんじゃないかと思います。


Q7 親や先生が言った言葉で、嫌だったことがあれば教えてください

えぬ:高校の単位が危うくなって、カウンセラーの先生に休学するかどうかを相談していたんですが、職員室の前を通った時に先生が偶然、「まだそのレベルではないので放っておきましょう」と衝撃的な発言をしたのを聞いてしまって…。そのせいで、先生っていう立場の人間が大嫌いになりました。裏切られた気持ちでした。

「こういうのが辛いんだよ、わかってほしいんだよ」って親に懇願したら、突き放されたこともあって。「知らないよ、そんなの。そんなこと言ってる時間あったら学校行きなさい」って言われて。親からしたら何気ない一言だったかもしれないんですけど、私はやっぱり一人なんだっていう疎外感、孤独感を感じました。

阿部:ありがとうございます。辛いですね。聞いて欲しかったですよね。他の皆さんからもありますか?

もりけん:僕のお父さんは、「男は男らしくあれ」という考えの昭和人間で、無理やり空手や格闘技を習わされたり、いろんな制限をされたせいでストレスがたまり、体調を崩してしまった。親ってどうしても制限したがるじゃないですか。僕の場合、納得できないほどの制限を数多く受けてきたせいで不登校になってしまったというのがあるので、そこはちゃんと気をつけてもらいたいです。

阿部:ありがとうございます。逆に、親にされて嬉しかったことはありますか?

えぬ:自分には、ダンサーになるって夢があるんですが、母はその気持ちを分かってくれて、学校に行かなくてもいいからダンスは行きなさいよって言ってくれたんです。自分を理解してくれる、応援してもらっていると思うと、すごく嬉しかったです。

ゆうき:学校に全然行かなかった時に、親から何度か「適応指導教室に行ってみない?」みたいな話をされたことがあったんです。その時は、「行くか、あんなところ」みたいに返していたんですが、自分にとって必要だと思った時に、しっかりと情報を集めてくれていたり、諸々の手続きをしたりと自分の動き出す準備をしてくれていたことは嬉しかったですね。

:人と会ったりするのを制限しない、何もしないけど止めもしないっていう親の距離感が、僕には合っていたのかなと思います。自分の価値観を否定されなかったのが、僕にとってはありがたかったです。

阿部:皆さんありがとうございました。それではここで10分休憩いたします。







 
 
 

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